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獣医療広告ガイドライン

印刷用ページを表示する 掲載日:2010年12月20日更新

獣医療に関する広告の制限及びその適正化のための監視指導に関する指針(獣医療広告ガイドライン) 

平成20年12月1日最終改正

(下記記載内容のうち広告可能な例を青字で、広告制限に抵触する例を赤字で示してある。)

はじめに

獣医療に関する広告については、獣医療法(平成4年法律第46号。以下「法」という。)第17条第1項の規定に基づき一定の規制が行われているところであるが、今般、同条第2項の規定に基づき、その特例を定めている獣医療法施行規則(平成4年農林水産省令第44号。。以下「省令」という。)第24条が改正されたことに伴い、獣医療に関する広告の制限及びその適正化のための監視指導に資するため、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的な助言として本指針を策定するものである。

なお、獣医療における広告の実情を踏まえた効果的な監視指導を行うため、随時検討を行い、必要に応じて本指針の見直しを行うこととする。

1 広告制限の趣旨

  獣医療に関する広告により、獣医療について十分な専門的知識を有しない飼育動物の飼育者等(以下「飼育者等」という。)が惑わされ、不測の被害を被ること等を防止する観点から法第17条第1項の規定に基づき、獣医師又は診療施設の業務に関しては、その技能、療法及び経歴に関する事項を広告してはならないこととされている。

  ただし、専門科名及び学位又は称号並びに同条第2項の規定により省令で定めるものは広告制限の例外とされており、省令で定める広告が可能な事項の規定に当たっては、広告制限の趣旨を踏まえ、飼育者等に対する適切な情報提供を図る観点から、次に掲げる事項に留意しているところである。

(1)法令等において用語が規定されている等、その事項の概念及び範囲が明確であるもの

(2)法令の施行の円滑化に資するために表示する必要があるもの、又は国の施策として推進されている事項に関するもの

(3)社会的な混乱を招くおそれのないもの

2 省令の一部改正の概要

(1)趣旨

  近年、飼育者等の獣医療に対する関心の高まりを背景として、飼育者等から獣医師や診療施設に関する情報提供がより強く求められるようになり、従来の広告制限が飼育者等への適切な情報提供を阻害しかねない状況となっていた。こうした状況等を踏まえ、外部の有識者を委員とする「小動物獣医療に関する検討会」において、広告制限の緩和の必要性について検討を行ったところ、従来、広告が制限されてきた事項の中にも、飼育者等にとって不利益となるおそれの少ないものやむしろ有益なものがあり、広告制限の緩和を推進することが望まれるとされた。また、同時に、

  1) いずれの診療施設においても実施可能な一般的な診療行為であること

  2) 飼育者等が惑わされるおそれの少ないこと

  3) 飼育者等にとっての情報の必要性が高いこと

  を十分に勘案した上で進めることが重要であるとされたところである。

  このため、同検討会からの提言を踏まえ、また、従来の広告制限に対する基本的な考え方に則して、新たに広告が可能な事項を追加することを獣医事審議会に諮問し、同審議会の答申が得られたため、省令の一部改正を行い広告制限の緩和を図ったところである。

  なお、今回、新たに広告が可能とされた事項については、低価格診療等による誘引や不適切な診療による飼育動物の被害を防ぐため、比較広告や費用広告を禁止する規定を新設することとした。

(2)改正内容

  省令第24条に新たに規定された、広告制限の特例(広告しても差し支えない事項、及びその広告の方法その他の事項についての必要な制限をいう。)は次のとおりである。

1) 省令第24条第1項に追加された広告しても差し支えない事項(広告が可能な事項)

ア 獣医師法(昭和24年法律第186号)第6条の獣医師名簿への登録年月日をもって同法第3条の規定による免許を受けていること及び省令第1条第1項第4号の開設の年月日をもって診療施設を開設していること

イ 薬事法(昭和35年法律第145号)第2条第4項に規定する医療機器(以下単に「医療機器」という。)を所有していること

ウ 犬又は猫の生殖を不能にする手術(以下「避妊去勢手術」という。)を行うこと。

エ 狂犬病その他の動物の疾病の予防注射(以下単に「予防注射」という。)を行うこと。

オ 薬事法第2条第1項に規定する医薬品であって、動物のために使用されることが目的とされているものによる犬糸状虫症の予防措置(以下「フィラリア症の予防」という。)を行うこと。

カ 飼育動物の健康診断を行うこと

キ 獣医療に関する技術の向上及び獣医事に関する学術研究に寄与することを目的として設立された一般社団法人又は一般財団法人の会員であること。

ク 獣医師法第16条の2第1項に規定する農林水産大臣の指定する診療施設であること

2) 省令第24条第2項として新設された広告の方法その他の事項についての必要な制限

ア 1)のイからカまでに掲げる事項を広告する場合にあっては、提供される獣医療の内容が他の獣医師又は診療施設と比較して優良である旨を広告してはならないこと。

イ 1)のイからカまでに掲げる事項を広告する場合にあっては、提供される獣医療の内容に関して誇大な広告を行ってはならないこと。

ウ 1)のウからカまでに掲げる事項を広告する場合にあっては、提供される獣医療に要する費用を併記してはならないこと。

3 広告制限の対象範囲

(1)広告の定義

1) 広告とは、随時に又は継続してある事項を広く知らしめるものであり、次のアからウまでの全ての要件に該当すると飼育者等が認識できる場合には、法第17条の規定による広告制限の適用を受ける広告に該当するものである。

ア 誘引性:飼育者等を誘引する意図があること

イ 特定性:獣医師の氏名又は診療施設の名称が特定可能であること

ウ 認知性:一般人が認知できる状態にあること

2) 広告制限の対象となることを避ける意図をもって、例えば、「これは広告ではありません。」、「これは取材に基づく記事であり、飼育者等を誘引するものではありません。」との表現を行う者があることが予想される。

  しかしながら、診療施設の名称が記載されている、診療施設の名称がなくとも住所や電話番号等から診療施設が特定可能であるなど、実質的に1)に掲げたアからウまでの要件を全て満たす場合には、広告に該当するものとして取り扱う。

  また、新しい治療法等に関する書籍等に「当該治療法に関するお問い合わせは、○○研究会へ」等と掲載されている場合のように、当該書籍等では直接には、診療施設が特定されない場合であって「当該書籍は純然たる出版物であって広告ではない」等として、広告の制限の対象となることを回避しようとする場合もある。このような場合であっても、連絡先が記載されている「○○研究会」に問い合わせると特定の診療施設(複数の場合も含む。)をあっせん等していることが認められる場合であって、当該診療施設が別の個人や団体を介在させることにより、広告制限の対象となることを回避しようとしていると認められる場合には、これらは、いわゆるタイアップ本やバイブル本と呼ばれる書籍や記事風広告と呼ばれるものとして、実質的には、1)のアからウまでに示した要件に該当し、広告として取り扱うことが適当な場合があるので十分な注意が必要である。

3) 広告については、直接的に表現しているものだけではなく、関連する情報物を全体でみた場合に、暗示的又は間接的に広告であると一般人が認識し得るものも含まれる。例えばキャッチフレーズ、写真、イラスト、新聞・雑誌の記事の引用、伏字や暗示的表現等であっても1)のアからウまでの全ての要件に該当する場合は、広告に該当する。

(2)獣医療に関する広告制限の対象者

  法第17条では「何人も獣医師(獣医師以外の往診診療者等を含む。)又は診療施設の業務に関して、その技能、療法又は経歴に関する事項を広告してはならない。」とされており、獣医師のみならず、獣医師以外の関係者が広告を行う場合であっても広告制限の対象者とされる。

  なお、広告依頼者から依頼を受けて、広告を企画・制作する広告代理店や広告を掲載する新聞、雑誌、テレビ、出版等の業務に携わる者は、広告依頼者の責任により作成された広告の掲載、放送等を行うため、広告制限の対象者とはならないが、法や本指針に違反することが予見されているにもかかわらず広告した場合には、広告依頼者とともに法や本指針による指導等の対象となり得る。

(3)獣医療に関する広告を行う者の責務

  獣医師又は診療施設の業務に関して、その技能、療法又は経歴に関する事項の広告を行う者は、その責務として、飼育者等が広告内容を適切に理解し、飼育動物の治療等の選択に資するよう、客観的で正確な情報の伝達を行わなければならない。当然にして、その広告は飼育者等を惑わし、あるいは不測の事態を被らせるような内容であってはならない。

  なお、広告とみなされないものについても、適切な獣医療を提供する観点から、当事者の責任により飼育者等に正確な情報の伝達を行うことは、社会通念上、当然の責務である。

(4)具体的事例

1) その情報の伝達方法・媒体等から見て、通常、広告に該当すると考えられる例は以下のとおり。

  テレビコマーシャル、ラジオコマーシャル、新聞広告、雑誌広告、看板、ポスター、チラシ、ダイレクトメール(ハガキ等)、インターネットの広告サイト(バナー広告も含む。)

2) 通常、広告とはみなされないものの例は以下のとおり。
ア 学術論文、学術発表等

 学会・専門誌等で発表される学術論文、ポスター、講演等は、社会通念上、広告と見なされることはない。これらは、(1)の1)に掲げたアからウまでの要件のうち、アの「誘引性」を通常は有さないため、原則として、広告とはみなされない。

イ 新聞、雑誌等の記事

  新聞、雑誌等の記事は、「誘引性」を通常は有さないため、本指針上も原則として、広告とみなさないものとするが、飼育者等を誘引するいわゆる記事風広告は、広告とみなす。

ウ 体験談、手記等

  飼育者等からの伝聞により、実際の体験に基づいて、例えば、いわゆる口コミ等で評判を広める場合には、個人が特定の診療施設を推薦したにすぎず、「誘引性」を有さないため広告とはみなされない。

 ただし、当該診療施設が個人の体験談、手記等を利用しパンフレット等に掲載した場合は、「誘引性」を有するものとして扱うことが適当である。

エ 診療施設内掲示、診療施設内で配布するパンフレット等

  診療施設内掲示、診療施設内で配布するパンフレット等はその情報の受け手が、受診動物の飼育者等に限定されるため、(1)の1)に掲げたアからウまでの要件のうち、ウの「認知性」の要件に該当するものではなく、情報提供や広報と解される。

  ただし、診療施設の外から容易に見ることができるなど、その情報の受け手が限定されない場合は「認知性」を有するものとして扱うことが適当である。

オ 飼育者等からの申出に応じて送付するパンフレット電子メー等飼育者等からの申出に応じて送付するパンフレット、電子メール等は、「認知性」の要件に該当するものではなく、診療施設に関する情報や当該診療施設での治療法等に関する情報を入手しようと希望する特定の者に向けた情報提供や広報と解されるため、広告とはみなされない。

  ただし、希望していない者に送付されるパンフレット、ダイレクトメール等については、「認知性」を有するものとして扱う。

カ 診療施設の職員募集に関する広告

  診療施設の職員の採用を目的としたいわゆる求人広告は、診療施設の名称や連絡先等が記載されているが、飼育者等を誘引するものではないことから、「誘引性」を通常は有さない。そのため、原則として広告とはみなされない。

キ インターネット上のホームページ

  インターネット上の診療施設のホームページは、当該施設の情報を得ようとの目的を有する者が、U R Lを入力したり、検索サイトで検索した上で、閲覧するものであり、「誘引性」を通常は有さないため、原則として獣医療法上の広告とはみなされない。

  しかしながら、インターネット上のバナー広告、あるいは検索サイト上で、例えば「癌治療」を検索文字として検索した際に、スポンサーとして表示されるものや広告サイトで表示されるものなど、実質的に(1)の1)のアからウまでの全ての要件に該当する場合には、広告とみなす。

ク 行政機関の公報又はポスター

  地方公共団体等の行政の施策推進のために作成されたもの(行政機関から施策の公報を委任された者により作成されたものを含む。)は、特定の獣医師又は診療施設へ飼養者等を誘引するものではないことから広告とはみなされない。

4 広告が制限されている事項

(1)法に基づく制限事項

  法第17条第1項では、何人も、獣医師(獣医師以外の往診診療者等を含む。)又は診療施設の業務に関しては、1)獣医師又は診療施設の専門科名、2)獣医師の学位又は称号を除き、その技能、療法又は経歴に関する事項を広告してはならないこととされている。

  なお、技能又は療法とは獣医師が行う診療に関する獣医学的判断や技術に関する能力又は治療方法をいう。

(2)省令に基づく制限事項

  法第17条第2項では、(1)の制限にかかわらず、技能、療法又は経歴に関する事項のうち省令で定めるものは、広告することができるとされているが、これらの広告可能な事項についても、省令で定めるところにより、その広告の方法その他の事項について以下の制限がなされている。

1) 他の診療施設と比較して優良である旨の広告(比較広告

  省令第24条第2項第1号に規定する「提供される獣医療の内容が他の獣医師又は診療施設と比較して優良である旨」の広告とは、提供される獣医療の内容について、特定又は不特定の他の診療施設等と自ら(複数の場合を含む。)の診療施設等を比較の対象とし、自らが他よりも優良である旨を広告することを意味するものである。

  今回、広告可能とされた事項のうち、医療機器を所有していること、避妊去勢手術を行うこと、予防注射を行うこと、フィラリア症の予防を行うこと及び飼育動物の健康診断を行うことに関しては、比較広告を行うことはできないこととされている。

(例)・どこの動物病院よりも安全に手術を行います。

 → 他の動物病院より優良であるかのように認識されるおそれがあり、比較広告に該当する。

 ・○○さん(著名人)の猫ちゃんも当院の健康診断を受けています。

 → 著名人を広告に出すことで、他の診療施設より優良であるかのように認識されるおそれがあり、比較広告に該当する。

2) 誇大広告

  省令第24条第2項第2号に規定する「提供される獣医療の内容に関して誇大な広告」とは、提供する獣医療の内容について、著しく事実に相違する、又は必ずしも虚偽ではないが、事実を不当に誇張して表現していたり、飼育者等を誤認させる広告を意味するものである。

  なお、客観的に事実であると認めるに足りる根拠のない内容についての広告は、飼育者等を誤認させる広告として扱うものとする。

  今回、広告可能とされた事項のうち、医療機器を所有していること、避妊去勢手術を行うこと、予防注射を行うこと、フィラリア症の予防を行うこと及び飼育動物の健康診断を行うことに関しては、誇大広告を行うことはできないこととされている。

(例)・効果抜群のワクチンを接種します。

 → 何を根拠に効果抜群であるか不明であり、誇大広告に該当する。

 ・ワンちゃんの去勢手術も往診します。

 → 通常、往診では犬の去勢手術はできないため、誇大広告に該当する。また往診のみによって診療の業務を行っている場合は、「手術」を広告することは原則、誇大広告に該当する。

 ・当院で行う避妊手術は比較的安全な手術です。

 → 何と比較して安全であるか不明であり、客観的な事実と証明できない事項に該当する。

3) 費用(料金)の広告

  省令第24条第2項第3号に規定する「提供される獣医療に要する費用」とは、診療等の対価として必要な金銭であり、技能又は療法と併せて費用を広告することは、低価格競争による獣医療の質の低下を招き、社会の混乱を招くおそれが懸念されることから認められない。「より安価な」、「低価格で」、「料金は相談に応じます。」等の抽象的な表現であっても、通常同様の懸念があることから、その広告は制限されることとなる。なお、「費用については、電話で確認してください。」などの表現は、直ちに低価格を推測させるものではないことから、費用の広告とはみなされない。

  今回、広告可能とされた事項のうち、避妊去勢手術を行うこと、予防注射を行うこと、フィラリア症の予防を行うこと及び飼育動物の健康診断を行うことに関しては、併せて費用を広告することはできないこととされている。

(例)・どこよりも安くフィラリア症の予防を行います。

 →「安く」は費用の広告に該当する。なお、「どこよりも」は同時に比較広告に該当する。

(3)他法令に基づく規制

  法に基づく制限のほか、獣医療に関する広告の規制については、不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号。以下「景品表示法」という。)、薬事法等に基づくものがあり、これら他法令に違反する広告は、当該法令に基づく指導、処分等の対象となり得るものである。したがって他法令に抵触する広告を行わないことは当然として、他法令に関する広告ガイドラインも遵守する必要がある。景品表示法及び薬事法の広告制限の概略は以下のとおりである。

  なお、これらの広告に関する規定は、重畳的に適用され得るものであるので、他法令に違反するとの理由や他法令に基づく処分を受けるとの理由で、法の広告違反が免責されることはない。

1) 景品表示法

  景品表示法は、第4条第1項の規定に基づき、不当な表示の禁止を定めており、「商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示すことにより、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示」を禁止している(同項第1号)。このため、実際のものより著しく優良である及び公正な競争を阻害するおそれがあると認められる場合等には、法第17条の制限の適用の可否にかかわらず景品表示法に違反する可能性がある。

  とりわけ法第17条第2項後段の規定による省令第24条第2項第2号の違反となる誇大広告については、同時に景品表示法に違反する可能性が非常に高いものである。

2) 薬事法

  薬事法は「何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。」(薬事法第66条第1項)、「医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。」(同条第2項)、「何人も、第14条第1項又は第23条の2第1項に規定する医薬品又は医療機器であつて、まだ第14条第1項若しくは第19条の2第1項の規定による承認又は第23条の2第1項の規定による認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。」(薬事法第68条)とされ、医薬品、医療機器等(動物用医薬品及び動物用医療機器を含む。以下同じ。)の虚偽・誇大広告、承認前の医薬品及び医療機器の広告を禁止している。

(4)その他

  獣医療に関する広告は、飼育者等が広告内容を適切に理解し、治療等の選択に資するよう、客観的で正確な情報の伝達に努めなければならないものであることから、獣医療の内容や診療施設について品位を損ねる、あるいはそのおそれがある広告は、獣医療に関する広告として適切ではなく、厳に慎むべきものである。例えば、処方できる医薬品の最大量を広告(「1年分処方します。」など)することは、獣医療の内容が疑われるだけでなく、販売広告にも等しいため許されることではない。

5 広告可能な事項

(1)法及び省令により規定された広告可能な事項

1) 法第17条第1項第1号関係

  技能又は療法に関する事項のうち「獣医師又は診療施設の専門科名」は広告が認められている。「専門科名」とは、獣医師が診療を担当している診療科名をいう。具体的には大学の講座名にある等一般に広く認められているもの、診療対象動物名を示すものがある。例としては以下に挙げるものが該当する。

ア 専門分野を示す科名

  内科、呼吸器科、消化器科、循環器科、アレルギー科、寄生虫科、外科、整形外科、泌尿器科、繁殖科(産科、臨床繁殖科)、放射線科(臨床放射線科)、腫瘍科、画像診断科、皮膚科、耳鼻科、眼科、歯科

イ 対象動物を示す科名

  大動物専門科、牛専門科、豚専門科、馬専門科、鶏専門科、犬・猫専門科、小鳥専門科、エキゾチックアニマル専門科、うさぎ専門科、ハムスター専門科、フェレット専門科、は虫類専門科

2) 法第17条第1項第2号関係

  経歴に関する事項のうち「獣医師の学位又は称号」は広告が認められている。本条において「学位」とは大学、独立行政法人大学評価・学位授与機構又は旧学位令により授与される獣医学士、獣医学修士、農学博士、獣医学博士、博士(獣医学)等をいい、「称号」とは獣医師法附則第19条に規定する「新制獣医師」等をいう。

  なお、専門医、認定医等については、学位又は称号に含まれず、また、専門性資格に関する制度は獣医療では確立していないため、これらを広告することは認められないことに留意する必要がある。

3) 法第17条第2項前段関係(広告しても差し支えないものとして省令で定めるもの

  技能、療法又は経歴に関する事項のうち、省令で定めるものは法第17条第1項の規定にかかわらず広告することができる。この場合、4の(2)のとおり広告の方法その他の事項について制限を受ける。

ア 省令第24条第1項第1号関係

  技能、療法又は経歴に関する事項である「獣医師法第6条の獣医師名簿への登録年月日をもって同法第3条の規定による免許を受けていること及び省令第1条第1項第4号の開設の年月日をもって診療施設を開設していること」とは、獣医師免許が与えられた年月日及び診療施設開設者が診療施設を開設した年月日(いわゆる開業日)をいう。

  なお、獣医師は、獣医師免許を受けることにより獣医師としての技能を発揮し、かつ診療等を行うことができることとなるため、同号の規定は単に経歴のみではなく技能又は療法に関する内容も含むものとして扱っている。

イ 省令第24条第1項第2号関係

  本号に規定する「医療機器」とは、薬事法施行令(昭和36年政令第11号)別表第1の医療機器をいう。

「医療機器を所有していること」について広告を行う場合にあっては、薬事法第66条の規定(誇大広告等)及び同法第68条の規定(承認前の医療機器の広告の禁止)に基づき、当該医療機器が特定可能となる事項等(販売名、型式番号等)について広告することは認められない。ただし、当該医療機器が特定されないような一般的な名称(例えばエックス線撮影装置、X線CT装置(CT)、超音波画像診断装置、磁気共鳴画像診断装置(MRI)等)及びそれらの導入台数、導入年等について広告することは可能である。

  なお、医療機器は、それを使用して行われる技能又は療法を連想させる(例えば、エックス線撮影装置は、技能又は療法であるレントゲン検査を連想させる。)ため、従来はこれを所有していることも広告制限の対象としてきたところであるが、今回の広告制限の特例の拡大により「医療機器を所有していること」に限って広告が認められることになった。

 広告が可能な例及び不可能な例は、以下に掲げるとおりである。
(例)広告可

 ・○○動物病院腫瘍科においてMRIを導入しました。

 → 技能、療法を直接広告しているわけではないので広告可。

 ・動物用として承認されているX線CT装置の写真の掲載(ただし、当該CTが特定可能となる販売名や型式番号が明示されているものは広告不可。)

広告不可

 ・MRIによる腫瘍診断を実施しています。

 → 腫瘍診断は技能、療法に該当するので広告不可。

 ・動物用として未承認のX線CT装置の写真の掲載

ウ 省令第24条第1項第3号関係

  技能又は療法に関する事項のうち「家畜改良増殖法(昭和25年法律第209号)第3条の3第2項第4号に規定する家畜体内受精卵の採取を行うこと」とは、雌牛から体内受精卵移植の用に供する受精卵を採取することであり、例えば「供卵牛に多排卵処理後、人工授精を実施し受精卵を採取します。」といった施術内容についても広告が可能である。

  なお、家畜改良増殖法上、家畜体内受精卵移植に係る家畜については、牛以外の家畜は定義されておらず、例えば豚を対象に家畜体内受精卵の採取を行うことを広告することはできない。

エ 省令第24条第1項第4号関係

  技能又は療法に関する事項のうち「避妊去勢手術を行うこと」とは、犬又は猫の避妊去勢手術を行うことをいう。犬又は猫以外の動物の避妊去勢手術を行うことを広告することはできない。

  なお、以下の例のとおり、避妊去勢手術の術式等について広告することは可能である。

(例)広告可

 ・当院では犬及び猫の卵巣子宮の全部摘出による避妊手術を行っています。

広告不可

 ・インプラントの皮下への埋め込みによる避妊をお勧めしています。

 → 生殖を「不能」にする手術ではないので広告不可。

 ・去勢手術犬10,000円、猫15,000円で受付中。

 → 費用を併記しているため、広告不可。

オ 省令第24条第1項第5号関係

  技能又は療法に関する事項のうち「予防注射を行うこと」とは、ワクチンを使用して予防注射を行うことをいう。この場合、薬事法で承認された事項(対象動物、効能効果等)、接種するべき回数についても、併せて広告することは可能であるが、薬事法の広告制限の趣旨からワクチンが特定可能となる販売名等を広告することは認められない。

(例)広告可

 ・犬猫に狂犬病の予防注射を実施しています。

 ・犬の混合ワクチン扱っています(ジステンパー、パルボウイルス感染症、○○病を予防することができます)。

広告不可

 ・犬にパルボウイルス感染症が大流行しています感染すると死に至ります。当院ではパルボウイルスに対するワクチンを常時実施しています。

 →パルボウイルス感染症が流行しているか、客観的に判断できず、また飼育者等の不安を煽る誇大広告に該当するため、広告不可。

 ・狂犬病予防注射、1回9,000円

 → 費用を併記しているため、広告不可。

 ・ハムスターにも○○病のワクチンがあります。

 →ハムスターを対象とするワクチンは薬事法上承認されていないため、広告不可。

カ 省令第24条第1項第6号関係

  技能又は療法に関する事項のうち「フィラリア症の予防を行うこと」とは、犬糸状虫症の予防薬を使用して予防措置を行うことをいう。この場合、薬事法で承認された事項(対象動物、効能効果等)についても、併せて広告することは可能であるが、薬事法の広告制限の趣旨から予防薬が特定可能となる販売名等を広告することは認められない。

(例)広告可

 ・月1回の経口投与でフィラリア症が予防できます

 ・当院では注射によるフィラリア症の予防を行っています

広告不可

 ・フィラリア症の予防と同時に犬回虫を駆除します。

 →犬糸状虫症の予防薬には犬回虫等の駆除が効能効果として認められているものがあるが、犬回虫等の駆除を行うことはは、「フィラリア症の予防を行うこと」から逸脱するため、広告不可。

 ・フィラリア症の予防薬投与、1回3,000円

 →費用を併記しているため、広告不可。

キ 省令第24条第1項第7号関係

  技能又は療法に関する事項のうち「飼育動物の健康診断を行うこと」とは、獣医師が行う疾病の診断・治療を目的とした通常の診療とは別に、その有する獣医学的知識を用いて健康診断を行うことを意味するものであり、飼育動物の種類、実施する検査の種類を併せて広告することも可能である。

  具体的には「身体検査」、「血液一般検査」、「尿検査」、「糞便検査」「エックス線撮影」、「超音波診断検査」等、付記することも差し支えなく、実施日又は実施時間等を併せて示すことも可能である。

  ただし、現時点で獣医学的又は社会的に様々な見解があり、広く定着していると認められない検査については、広告することは認められない。

(例)広告可

 ・当院では犬の健康診断をお勧めしています。「身体検査」「血液一般検査」「尿検査」「糞便検査」を行う半日コースと、「エックス線撮影」「超音波診断検査」を追加した1日コースがあります

広告不可

 ・当院では犬の健康診断をお勧めしています。

  基本料金は20,000円です。またワンちゃんの実年齢測定も追加できます。

 →費用は広告不可。また実年齢測定は獣医学的に広く定着していると認められた検査ではないため広告不可。

ク 省令第24条第1項第8号関係

  経歴に関する事項のうち「家畜伝染病予防法(昭和26年法律第166号)第53条第3項に規定する家畜防疫員であること」とは、都道府県知事が当該都道府県の職員(臨時雇用を含む。)で獣医師であるものの中から任命した家畜防疫員であることをいう。

ケ 省令第24条第1項第9号関係

  経歴に関する事項のうち「家畜伝染病予防法第62条の2第2項に規定する家畜の伝染性疾病の予防のための自主的措置を実施することを目的として設立された一般社団法人又は一般財団法人から当該措置に係る診療を行うことにつき委託を受けていること」とは、具体的には社団法人都道府県家畜畜産物衛生指導協会等の指定獣医師であることをいう。

コ 省令第24条第1項第10号関係

  経歴に関する事項のうち「獣医療に関する技術の向上及び獣医事に関する学術研究に寄与することを目的として設立された一般社団法人又は一般財団法人の会員であること」とは、具体的には社団法人日本獣医師会、各都道府県又は政令市の社団法人である獣医師会(以下「地方獣医師会」という。)、社団法人日本獣医学会、社団法人日本動物病院福祉協会又は財団法人鳥取県動物臨床医学研究所等の会員であることをいう。

  なお「会長」等の役職についてまで広告することは、認められていない。

サ 省令第24条第1項第11号関係

  経歴に関する事項のうち「獣医師法第16条の2第1項に規定する農林水産大臣の指定する診療施設であること」とは、牛、豚等の産業動物又は犬、猫等の小動物の診療業務に関する農林水産大臣指定の臨床研修診療施設であることをいう。

シ 省令第24条第1項第12号関係

  経歴に関する事項のうち「農業災害補償法(昭和22年法律第185号)第12条第3項に規定する組合等(以下「組合等」という。)若しくは農業共済組合連合会から同法第96条の2第1項(同法第132条第1項において準用する場合を含む。)に規定する施設として診療を行うことにつき委託を受けていること又は組合員等(同法第12条第1項に規定する組合員等をいう。)の委託を受けて共済金の支払を受けることができる旨の契約を組合等と締結していること」とは、農業共済組合若しくは共済事業を行う市町村(以下「組合等」という。)若しくは農業共済組合連合会の嘱託獣医師又は当該組合等の指定獣医師であることをいう。

(2)獣医師又は診療施設の業務に関して、その技能、療法又は経歴に係わらない事項

  従来より獣医師又は診療施設の業務に関して、その技能、療法又は経歴に関する事項以外の事項であることから広告可能と認められていた事項については、今回の広告制限の改正後においても、引き続き広告は可能である。

(例)

・診療施設の開設予定日

・診療施設の名称、住所及び電話番号

・勤務する獣医師の氏名

・診療日、診療時間及び予約診療が可能である旨

・休日又は夜間の診療若しくは往診の実施

・診療費用の支払い方法(クレジットカードの使用の可否等)

・入院施設の有無、病床数その他施設に関すること

・診療施設の人員配置

・駐車場の有無、駐車台数及び駐車料金

・動物医療保険取扱代理店又は動物医療保険取扱病院である旨

・ペットホテルを付属していること、トリミングを行っていること、しつけ教室を開催していること等

6 広告の監視指導

(以下略)